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春の日差しは健康を促進させる柔らかな温もりを内に秘めており、朝という少し気だるくなる人々に喝を入れる。
春が終わりに近付く今日この頃、1人の男が欠伸を漏らしながら通学路をゆっくりと進んでいた。
170cmないほどの身長で、痩せてはおらず太ってもおらず筋肉もそこまではない普通の体型。
校則に引っ掛からないレベルの短く切り揃えた黒髪や、あまりイケメンとは呼べない容姿。
この男を一言で表現するならば『普通』という言葉が一番しっくり来る。
制服に身を包みカバン1つで歩を進める彼は、他の登校生達に紛れてしまいそうになるほど特徴というものが皆無であった。
「ふぁぁぁ……ゲームやり過ぎたぁ……」
欠伸のやり過ぎで目元に涙を溜めながら、特に面白味のないことを呟きながら歩く彼。
名は山田一郎(やまだ いちろう)。
一三(にとり)中学の2年生であり、趣味は小説という『履歴書に何て書けばいいか分からないからこう書いとけばいいだろう』的な地味なもので、特技はこれといって無し。
異性との付き合いは勿論あるはずもなく、しいて彼の特徴を上げるとするなら運動が多少出来ることくらいか。
目元を擦りながらダラダラと歩く一郎だったが、ふと頭を小突かれて後ろに視線を向けた。
「よっ。ずいぶん眠そうにしてんじゃねぇか」
「あ、剣(つるぎ)君おはよう」
佐藤剣(さとう つるぎ)。
一郎の同級生であり、数少ない友達の1人。
軽く染めた男性にしては少し長めの茶髪に、着崩した服装があまり真面目な印象を与えない男子。
顔のパーツは細部に至るまで整っており、スラリと伸びた身長やそれなりに引き締まった体もプラスして『イケメン』の四文字を我が物にしている。
一三中学ではファンクラブ(本人非公認)が出来るほど。
簡単に言えば、山田一郎とは真逆の立ち位置にいらっしゃるわけで。
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