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---世は平安。
--あやかしの時代…。
ある雨の夜、三匹の狐が何者かに追われるように野を駆けておりました。
一番大きい狐は暗闇ような黒色の雄。
次に大きい狐は新雪のような白色の雌。
そして二匹に隠されるようにしている狐は月のように光り輝く銀色の雌。
三匹とも元は眩いばかりに美しい毛並みだったが今は泥にまみれ汚れている。
『…おい!!まて!この化け狐どもめ!!!』
一人の男がそんな三匹を殺すような勢いでわらじに付いた泥をはねさせ追いかけていた。
この男は、貴族のなかで位が高い貴族である主人に、世にも珍しい"月の狐"の皮を採ってこいと召し使わされ、この狐を追いかけているのである。
「(和未(オミ)…もうだめよ、あいつはもうすぐそこにきてる…)」
と白い狐は息を切らしながら黒に狐に話しかけた。
「(あぁ…雪(ユキ)、だがこの子だけでも…この子は私たち一族の大事な…)」
和未と呼ばれた黒い狐はクっと鼻先を銀色の狐に向けた。
「(紫月(シヅキ)、あの森が見えるか?あそこには私たちと同じもの達が暮らしている…。もし私たちに何かあったらそこへ行き、事情を話しなさい。わかったか?)」
紫月は小さな頭を下げ頷いた。顔には不安、悲しみ、恐怖がありありと浮かんでいた。
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