…記録0 出港…

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自衛隊……本来は日本の安全を保つため、直接・間接的な侵略に対する防衛を目的として1954年に保安隊・警備隊を改組したものだ。 『専守防衛』、それが自衛隊の守るべき規範。大平洋戦争後に日本国が憲法で定めた第9条……戦争放棄、戦力不保持と交戦権の否定。 長らくそれらは守られてきた……が、近年その戦力については増強に増強を重ね、大戦中を大きく上回るほどの装備となってきた。 矛盾とも言える状態でありながら、つい数年前におどろくべき法律が制定された。 『国家・国土保安強化法』。 日本国の領権、利益への著しい侵犯を受けた場合、武力行使を認めるという内容であった。ただし、それは『専守防衛』が前提であることには変わりがない。自分からの攻撃は認めないということだ。 だが攻撃を受けた場合、自衛隊や海上保安庁などの船舶が内閣や国会の承認を必要とせずに反撃が出来るようになったという法律だ。 過去の日本世論であれば絶対に認めない法律である。 法律制定の発端となったのは、去る2012年9月に起きた日本の尖閣諸島国有化によって日中関係の大幅に悪化したことにある。 国有化により、中国海軍巡視艇等が毎日のように領海や尖閣諸島近海に出没するようになったことである。 そして2014年8月……遂に日本世論が『国家・国土保安強化法』制定に動かざるを得ない出来事が起きた。 魚釣島の領海を警戒していた海上保安庁の巡視船『あわじ』が、領海内への侵入を強行した中国海軍巡視艇へ放水をして領海内から出るように警告をしたところ、同巡視艇から突然の攻撃を受け爆発沈没、乗組員98名中89名の死亡という情報が、日本世論の動揺を誘った。 エリコン 35mm機関砲などの艦砲も搭載していながら、応戦しなかったのは当時の海上保安法が反撃に武器の使用を認めておらず、万が一使用する場合も上層部の承認が必要であったということだ。そうした対応が後手に回り、『あわじ』は反撃許可が降りる前に爆発、中央部よりポッキリと折れて沈没した。 加えて『あわじ』の付近で警備を行っていた『はるかぜ』、『くろしお』も攻撃を受け多数の負傷者を出した。
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