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「…あの、紫の式?」
「藍と呼んでくれて構わないぞ」
「あら、今度からはそうさせてもらうわ。ところであとどれくらい?」
「あと計算式100行だ。それほど時間はかからんよ」
紫様に示されて場所から調査を始めた私たちは、この部分の結界が弱体化していた原因が分かった。
結界の構成を司っている祠の一つが、何らかの形で損壊しているのだ。
幻想郷側ではなく、外界側であるため、こちらから出向く必要があり…。
そして、秋半ばの肌寒さが漂う森林に足を踏み入れたのだった。
「今の時期は冬に向けて生物が歩き回る。一応、周辺を警戒しておいてくれないか?」
「むしろ、生物は本能で私たちを感じ取ると思うけど?」
そういって周囲を軽く見回しているとき、猟銃の発砲音に似た物音が放たれる。
それは、獣の鳴き声などではなく、あまりにも人為的で…。
私たちがいるこの空間は、本来ならば結界が敷かれており無関係の人間が立ち入ったとしても彷徨う末に脱出することができる空間である。
しかし、一方で歪んでいる空間でもあるため、自然現象とは切り離されている。
……つまり、我々は結界を修復しなければならないのに、祠の場所からほとんど離れていない場所にまで侵入した人間がいるということを確認してしまった。
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