39人が本棚に入れています
本棚に追加
庭先で泣きわめいていると、そこへ男の格好をした女性が駆け付けた。
くすんだ黄色の長い髪を頭の高い位置で結った、軽快な動きをする女性。
姉のようであり、兄のようであり、彼女はとても頼れ、自分にもとてもやさしくしてくれる。
どうした、何があった、何故泣いている、と問いながら姫を起こし背を撫でてくれた。
けれど言葉にできずただただ泣いていると、彼女は手の怪我に気づきそっと手を包んでくれた。
「話せぬのなら、言わなくともいい。だが、二人はどうした?」
一緒に居た二人はどこへ行ったのだ、一緒ではないのか、と問われ、姫は唇を噛み、泣いた。
その様子が尋常ではないと感じたのだろう、彼女も唇を噛み、十二単を着た姫を抱き上げ立ち上がった。
「当主様の許へ。彼の人なら、おまえを慰めてくれるだろう。落ち着いたら、すべてを当主様にお話し? 私は無理には聞かぬから」
やさしく言い聞かせ、彼女は邸へ上がり、姫を当主の許へ連れて行った。
最初のコメントを投稿しよう!