憎しみの果て

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抱えられた姫を見た当主は、驚き目を見開いたが、くすりと笑い、姫を女から受け取り、自分の傍に座らせた。 「何故、泣いておる? 可愛い姫よ」   やさしくも逞しい、我らが当主の声。 その声に、姫は唇を噛み、何かを発散させるかのように泣き喚いた。 それを、当主は笑いながら抱きしめ、宥めるようやさしく扱った。 「萩の姫からは、話を聞いておく。おまえは下がれ。寿々(すず)の兄妹にはこの事を悟られぬようにせよ。あれらは知ればうるさく騒ごう」   当主に言いつけられ、女は頭を下げ部屋を後にした。   部屋の周りから気配が消えたことを確認し、当主はそっと姫の頬に触れた。 「姫よ。いつまで泣いておる。その可愛い顔を涙で濡らしてはもったいない。笑え……とは無理か。落ち着くまで、傍に居よう。寂しき夜は人肌が恋しかろう」   優しく言い、姫の濡れた頬を拭い、そっと唇に逞しい指で触れる。 けれど姫はただ泣くばかりで、抵抗も何もしない。 それをくすりと笑い、当主は姫の唇を奪う。
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