39人が本棚に入れています
本棚に追加
夜が明け目を覚ますと、そこには当主の清々しい顔があり、姫はその顔に頬を赤らめた。
思えば自分は着物を一枚まとっているだけ。
恥ずかしい姿に、姫は身体を丸める。
そんな初々しい姿に、当主は紫と銀の混じった稀なる瞳に笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でる。
「おはよう、萩の姫」
「兄上、様……っ。その…茵をお借りしてしまい、申し訳ありません…」
赤い顔の姫に、当主はくすりと笑い、結われていない淡い紫の髪を掻き上げながら起き上がり、彼女に着物を羽織らせる。
と、姫も起き上がり、その着物に身を包んだ。
「おまえを奪った男に、謝罪か。普通の女ならば、最低だと叫び頬を平手打ちだろうに」
情けなく笑う当主に、姫は暗い顔で俯く。
「初めてではございませぬもの。あなた様は、不安に押しつぶされる私を、いつでもこうして慰めてくださいます」
「自分を慰めているだけかもしれぬ。それでも良いというのか」
「……萩は、あなた様と生きると、決めました」
言い、顔を上げ当主を見つめる。
その朱色の瞳は弱いけれど、強い意志を感じさせる。
その瞳に、当主は驚いていた。
最初のコメントを投稿しよう!