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「萩……。嬉しいことを言ってくれる。だが、それを聞き、桔梗は怒るであろうに」
ふっと笑うが、途端に目頭を赤くする姫を見、はっと思い出す。
「萩。おまえ、桔梗と葛と一緒であったであろう。二人は、部屋か?」
出かけ、帰ってくれば必ずその事を伝えに来る桔梗。
だが、昨日はこの姫だけが姿を見せ、姫の兄である桔梗の姿はなかった。
何故だろう、胸騒ぎがする。
姫の肩を掴み、当主は額に冷や汗を浮かべる。
「桔梗と葛は、如何した」
「っ……!」
再度尋ねれば、姫は唇を噛み、当主の胸に顔を埋めた。
「兄上様……。萩は、愛しき者を殺しとうございます。心より愛してやまなかったあの孤高の花を、抹消しとうございますっ」
「萩。何を言っておる。しっかりと説明をし」
肩を掴んで離され、姫は涙をぬぐい、俯きながらも口を開く。
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