憎しみの果て

6/18
前へ
/480ページ
次へ
「萩……。嬉しいことを言ってくれる。だが、それを聞き、桔梗は怒るであろうに」   ふっと笑うが、途端に目頭を赤くする姫を見、はっと思い出す。 「萩。おまえ、桔梗と葛と一緒であったであろう。二人は、部屋か?」   出かけ、帰ってくれば必ずその事を伝えに来る桔梗。 だが、昨日はこの姫だけが姿を見せ、姫の兄である桔梗の姿はなかった。   何故だろう、胸騒ぎがする。   姫の肩を掴み、当主は額に冷や汗を浮かべる。 「桔梗と葛は、如何した」 「っ……!」   再度尋ねれば、姫は唇を噛み、当主の胸に顔を埋めた。 「兄上様……。萩は、愛しき者を殺しとうございます。心より愛してやまなかったあの孤高の花を、抹消しとうございますっ」 「萩。何を言っておる。しっかりと説明をし」   肩を掴んで離され、姫は涙をぬぐい、俯きながらも口を開く。
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加