憎しみの果て

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「兄様は、糶雅様を七草に連れ戻そうとなさいました――」   話し出す姫に、当主は目を剥く。 けれど、彼女が話を終えるまで、彼は決して口を出そうとしなかった。 彼女がすべてを話し終えた時、初めて口を開き、消えた華に憤怒を表し、拳を硬く握った。 「芹め……!! この怒り、もう押さえてはおけぬ。桔梗、葛。おまえ達の無念、七草は忘れはせぬ。復讐を果たそうぞ。そして桔梗。よう姫を守り抜いた。我が兄弟よ、姫は私が責任を持ち守り抜こう」   そう言って姫を抱きしめ、怒りにうち震える。 そんな彼に、姫はそっと寄り添い、胸に当てた手でぎゅっと拳を握った。 「兄上様…」 「藤様。その復讐、手始めに私どもにお任せ願えませんでしょうか」   声に顔を上げれば、部屋の前に、いつの間にか男と女が立っていた。   くすんだ黄色の長い髪を頭の高い位置で結い、片膝を突き緑色の細い瞳で当主を見据える女。   淡い桃色のうねった髪を結いもせず肩下まで伸ばした――壁に背を預け吊り上げた口元を扇で隠しながら濃い紫の瞳で当主と姫を見据える、直衣を着た男。
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