憎しみの果て

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憎しみの果て

兄に逃げるよう言われ、この邸に無理やり送られた。 朱色の瞳を涙で濡らし、頬を涙で濡らし、止むことの知らぬ涙を流し続ける。 兄に伸ばした手――それも届かず、気付けば我が家である邸で―― 姫は庭先で泣き崩れた。 届かなかった手で拳を握り、その手で何度も地面をたたいた。 その力は弱かったけれど、元々弱いその肌にはすぐ傷ができ、地面が一か所だけ赤く染まった。
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