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僕は夏というのは暑さを除けば歓迎する。
プール、海、人を解放的にする季節、夏。
プールへ行けば水着を眺め、海へ行けばナンパをし、家に引き篭り積んだRPGをする。
宿題なんてものは夏休み入りして三日で終わらせておけばいい。
素晴らしき現代科学、そんな恩恵をフルに使い贅沢に休みを浪費するのが楽しみだった。
だがしかし。
「あーーぢーーーーいーー」
窓を開けると温められた不快な風が全身を撫で、日差しが肌を焼き汗を滴らせる。
滴る汗は休む事を知らず僕の不愉快指数を鰻上りにさせるだけだ。
ベッドに半裸で体を投げ出す、シャワーを浴びてもすぐ汗が吹き出る。
冷房チックな魔法道具はあっても使い捨てでこの時期は飛ぶように売れて在庫など皆無。
茹だる頭でその機構を読み解き、作ろうものなら死ねる。
落ち着いて作業できる空間で作りたい、現代科学の結晶であるクーラーを。
「あにきー、好きー、あついー」
僕に全裸で抱きついてくるカンナ、勇者業をお休みしてこっちに遊びに来てるがバカンスには程遠い。
「肌が焼けるほど外で練習してる奴が今更何を。つか暑い、くっつくな」
「朝夕は走ってるけど暑いもんは暑いよー。クーラー! クーラーはどこー!」
僕にくっつきながら健康的な肉体を見せびらかし暴れる。
僕が育てた胸が軽く揺れて見てしまうが糞暑いのでそんな雰囲気にはならない。
クーラーガンガンにして抱き合うのも最高の贅沢だった、と。
桃色のサイドテールは取り払われ、片方だけ長い髪は僕とカンナの肌に張り付いている。
「あぁ、暑い、死ぬ」
「くーらー!」
僕ら勇者二人は現代っ子で、科学が無いとダメダメだった。
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