放蕩姫

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「カオル様ー、お茶しに参りました」  金髪蒼眼で肩まで伸びた金髪はサラサラとして指に絡むことなく錦糸のよう。  頭の頂点からはアホ毛がぴょんと飛び出てゆらゆらと揺れている。  イシリア姫がいつもの様に庭園話をしに来た。  付き従うように黒い髪を結上げたメイド服のユキも。 「はいはい、寛いでね」 「今日は秋頃に咲く花についてお話しましょう」  物凄い良い笑顔で誘ってくるイシリア姫、後ろでユキが楽しませろと睨んできてる。  本当に薔薇姫至上主義なんだから。  というか僕は仕事中なんだけど。  今更だけど、物凄い今更だけど。 「今度また見に行くよ」 「はい、是非」  手入れの仕方や花にも色々と違いがあるんだなーと素直に感心。  思わず聞き入ってしまった。  美人に茶を誘われて断る事はしない。  ようやく書類に手を付け、再開。  考えてみた。目の前にいる人達。  姫が三人、お付きが三人。  毎回なんで集まってくるの?  当然のようにお茶タイムはここになってるし。  お菓子持って来てくれるのは凄い嬉しいんだけど。  確かにハンナの言う通り常識人がいない。  ハンナだけが良心であり常識人、エルフだけど。 「ハンナ、君は最初から常識人で素敵だったね」 「は、はぁ。ありがとうございます?」  僕の言葉に混乱しつつも反応してくれるハンナ。  僕の味方は君だけだ。 「ハンナ、今度二人で食事に行かない? 常識について語り明かそう」 「色々とおかしな部分が見受けられますよカオルさん、やはりお疲れでは?」  心配そうに僕の顔を覗き込んでくるハンナ。  エメラルドの瞳が綺麗だ。    この執務室では一番癒されるかもしれない。
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