自殺について

１

　その後も車の轍を頼りに彼はバイクを走らせた。交差点では信号待ちの車が渋滞している。その信号は彼の目当てとする国道との交差点で、国道は交通量も多く、轍も大きなものができているに違いない。会社に帰るためにはその道を通るしかないと彼は思っていたが、わずか１００Ｍほどの信号までの距離がなかなか進まない。
　その国道と交差してかつ信号の設けられている道、即ち彼の通っている道は信号に向かって４０Ｍほど登りの坂道になっていて、結構な傾斜もついている。その坂道で車がたびたびスタックしては止まりスタックしては止まりを繰り返している。一台がなんとか抜け出しても、次の一台がやはりスタックして立ち往生する。
　彼はその中から女性が押している一台のワゴン車の援護にあたったりしたが、信号手前でスタックする車は後を絶たず、更に国道でも渋滞が発生していてこの交差点を抜け出すのは容易なことではないなと彼は思った。