“先輩”

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「て言うか、何処から電話掛けてきたの?知らない番号だったからびっくりしたよ」 「あ…引っ越し、したんです」 柳井は、ふうん、と、それには突っ込む気がないのか、チケットを渡すでもなく、雅の顔を見つめて。 急に真顔になった。 「あー…こないだ、のさ、ライブの時の」 「あ、はい」 淡々と返事はしたが、雅は急に何かに気が付いたように慌てだした。 「あ、あ…あのですね、別に全身を見たとか…特にエロチックな話ではないんですよ?」 「…え? あ…ああ、もしかして刺青の話!?」 「えぇ!? その話じゃなく!?」 なんとなく墓穴を掘った気がして、雅の目は一瞬で遠退いた。 「いや…あの時さ、知り合い、だったんだって思って…」 でも、ちょっと隠す気だったろ? 「なんで、かなあ……とか…もしかして彼氏かなあ…なんて」 言いにくそうに口ごもった柳井が、気まずさを誤魔化すように笑顔を浮かべて。 雅の手にチケットを握らせた。  
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