キスと、それ以上

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「…雅」 「はい?」 「……いや、何でもない」 目を逸らした凱司を、怪訝そうに更に覗き込んだ雅が、ふと不安気に目を揺らした。 「やっぱり、…駄目だった?」 友典さんと、付き合ってる事にするのは、と雅は小さく訊く。 「…問題ない。その方が無理なく過ごせるんだろ?」 問題はそこじゃない。 問題は、俺がそれを不覚にも不快に感じ、こんなにも不安定になった事だ。 「じゃあ…どうしたの?」 「……どう、したんだろうな」 左腕を伸ばせば、おとなしく引き寄せられる。 膝の間に閉じ込める、さっきと同じ体勢。 「…凱司さん?」 「…あぁ?」 ようやく指に挟んだ煙草を押し消し、最後の煙を吐き出した。 腰に回された腕と、ふいに唇に触れた親指とに、ようやく雅の目に、緊張がよぎった。 強烈な、独占欲。 そんなものが一瞬、全身を駆け抜けた。 止まらない、かも知れない。  
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