2895人が本棚に入れています
本棚に追加
火が、ついた。
だが、消さねばならない。
消してやらねば、ならない。
「……泣くな」
「だっ…て…だって!」
つぷりと指を差し挿れれば、素直に身をよじる。
号泣と言っても良いほどに手放しで泣く雅の体に、今はこれ以上、刻めない。
ここまでだ。
そもそも、やらないと常々言っていたのは自分なのに、と。
我に返った。
返って、しまった。
「…泣くな。大丈夫だ」
指は沈めたまま、雅の髪を撫でた。
額に、唇を落とす。
泣きながら、初めてしがみついてきた雅に、首を抱かせた。
指は、届く所まで沈め、何度も探る。
「やっ…やだっ…凱司さんっ…凱司さん…っやめ…怖…いっ」
ふいに泣き止んだ雅が、耳許で悲鳴に似た声を上げた。
差し挿れた指が、きつい収縮に圧迫される。
火を消すには、堕とせばいい。
執拗に擦り上げながら。
息を詰まらせる雅の声を、聴いた。
喘ぎすら止まった数秒。
本能そのままに体を痙攣させた雅は、凱司の首をきつく抱き締めたまま。
長い、嬌声とも泣き声ともつかない声を、響かせた。
最初のコメントを投稿しよう!