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「……あ、の」
ぐったりと、ソファーに凭れたまま、雅が小さく声をかけた。
ちらりと横を見れば、まだ余韻の残っていそうな目と、視線がぶつかる。
「……な…何でもない」
「…なんだ、言え」
ふと目を伏せた雅が、遠慮がちにそっと指先を凱司の左腕に触れさせた。
「……ちょ…っとだけ、ぎゅって…しても…いいですか?」
消え入りそうに呟くや否や、雅は、泣き出しそうな顔で、慌てて背を向けた。
「なっ、何でもないです!!」
小さく膝を抱えた雅の後ろ姿に、目眩がした。
やっと余裕が戻って来たと言うのに。
(……殺傷能力半端ねぇ…)
溺れる訳には、行かない。
だけどコレは…反則だろう。
凭れていた体を起こし、雅の背から、両腕を回した。
自分で言った癖に、はっきりと緊張したのが可笑しくて、赤く染まった耳朶を食む。
「…続きは、いずれお前から仕掛けろ」
「……っ!!」
面白半分、半ば本気でそう囁けば案の定。
弾かれたように体を震わせ、首筋までもを赤く染め上げる。
凱司は、きゅ、と腕に力を込めて。
そうしたくなったらでいい、と。
吐き捨てるように、呟いた。
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