ライブハウスとオトモダチ

4/67
2893人が本棚に入れています
本棚に追加
/843ページ
成すがままに引きずられて消えた友典を目で追った雅が、恐々と凱司を見上げた。 「……か、彼氏です」 「思い直せ。あれはゾンビだ」 シャワーの音がして、たっぷり3秒は経った頃、友典の悲鳴とも怒声とも取れるような声が、聞こえた。 「……濡れゾンビ…」 「…笑かすな」 くく、と控え目に笑った凱司が、雅の襟元を引っ張った。 勢いに任せて噛んだ痕は、朝になって更にくっきりと、目立っていた。 「見えちゃいますか?」 「ギリギリだな。今日は右向くな」 「はい」 痛い、だろうと思う。 出がけに襟を開けて見た時は、歯形だとは解らないかも知れないけれど、皮膚のすぐ下で出血した、鮮やかな赤い小さな斑点が浮いていた。 「大丈夫」 にこっと笑顔を向けた雅が、リボンの形を直し、友典さん走ってる音がしますね、と凱司のシャツを、つまんだ。  
/843ページ

最初のコメントを投稿しよう!