雨の中で

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マンションの前に車が止まる。 『ここで、良かったですか?』 『はい、ありがとう、ございます…』 そうお礼を言ったものの、すぐ降りるべきが少し迷った。 こういう場合、部屋にあげてもらう事を期待しているのかな…? どう、しよう。 『あの、やましい事、考えてないんで。だから安心して降りてください。  部屋にあがりこもうなんて、考えてませんから。』 先に言われてしまった。というか、考えていた事、読まれてた。 『あ、でも。連絡先だけ、聞いてもいいですか?』 断る理由もないから携帯番号を交換し、車を降りた。 『じゃ、おやすみなさい。』 『本当にありがとうございます、おやすみなさい』 走り去る車を見ながら、ここ最近では感じなかった温かな気持ちがあった。 これは、恋になるのかな…? 愛に、成長できるのかな…? 激しい雨とともにやってきたこの感情に、まだ名前を付ける事は出来ない…。
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