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バタバタバタ
ガチャ
複数の足音が聞こえるとノックも無しに部屋のドアが開いた。
顔を向けてみると母と父、そしてメイドが一人いた。
多分、依存症執事が怒鳴るから部屋の外まで聞こえて慌ててメイドが母達を呼んだんだと思う。
父は俺の頬を見ると顔を真っ赤にして依存症執事の胸倉を掴んだ。
「執事の分際で何をしたか分かっているのか?元華韻家跡取りの華韻 辰也くん(カイン タツヤ)。」
低い声で言う父。
俺は黙ってその様子を見ていた。
母は俺に駆け寄ると焦った声で口を開く。
「静慈、大丈夫!?あの執事は直ぐにクビにするから、安心しなさい。」
その言葉に反応したのは俺ではなく、依存症執事だ。
酷く苦しそうな顔をして唇を噛んでいた。
血が出ていることに気づいていないのか尚も噛みつづける。
『……いい。』
「え?」
『クビにしなくていい。このまま彼を雇って下さい。』
「静慈、何を言い出すんだい。」
疑問を投げつけて来たのはさっきまで話していた母ではなく、依存症執事の胸倉を掴んでいる父だった。
『彼には一生執事でいてもらいましょう。それが、彼が一番苦しむ行為だと、俺は思います。』
父は考える仕種をすると頷く。
母はその様子を見守っていた。
「華韻くん。君にはまだここで働いてもらう。精々役に立つように。」
父はそう言うと俺の頭を撫でて出て行った。
母も父の後に部屋を出る。
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