プロローグ

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執事は焦った様にさりげなくおにぎりを隠す。 「い、今、レッスン中では?」 『それがどうした?』 「い、いえ…。」 自動的に閉まるドアを見て、俺は執事を見た。 安堵の溜息を着く執事に少し苛立つ。 それからノンストップで地下へ来た。 最上階とは違い、コンクリートで何処か冷たい。 『電気がないじゃないか。』 近くにあるのは鍵と清掃用のバケツにモップ。 それに、木の机の上には懐中電灯が置いてあった。 俺はポケットから白い手袋を着用すると懐中電灯を手にとって当たりを照らした。 真っ正面に鉄の戸があり、少し錆びている。 溜息を着きつつも戸を開けると、手首、足首、共に枷を付けた同い年位の少年が縮こまっていた。 「……辰也?」 幼い声。 少年がユックリと顔を上げる。 俺は冷めた目でそれを見ていた。 『違う。俺は静慈。』 「し……ず…?」 『静慈。しず じゃない。』 首を傾げる少年に俺は近付いて少年の目線にしゃがんだ。 『名前は?』 「僕、斬雪っていうんだ。」 『斬雪?誰?何故ここに?』 「僕はいらない…らしい。兄さんの邪魔になる…らしい。だから、幽閉?されてるんだ。」 淡々と話す斬雪に俺はただ相槌をうつだけだった。 ボサボサな髪は無造作に長く、汚れていて所々破れている服を着ていた。 『ふーん。じゃ、帰るね。』 「え……ま、待って。助けて…くれないの?」 『だって、俺に利益はないし。デメリット?が多過ぎ。それに、サボり過ぎると不審に思われる。何時からここにいたのか知らないけど、今まで生きてこれたんだから、まだイケるでしょ。』 ギィイ パタン 少し軋んだ戸の音と共に俺は部屋を出た。
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