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翌日。
俺はまた、斬雪に会いに来ていた。
エレベーターを地下で下り、ドアが開くと昨日出会った執事が唖然としながら立っていた。
『邪魔。』
一言で言って、俺は執事から擦り抜けるようにしてエレベーターから出た。
昨日ながら汚れているし、雰囲気的に肌寒い。
ポケットから小型の懐中電灯を出すと、斬雪がいる部屋の戸を開けた。
昨日と同様、部屋の隅に縮こまっている斬雪。
「………。」
『着てやったぞ。今日は俺の大嫌いな故橋が来ていたからな。』
「……しず…。」
『違うと言ったろ。おれは静慈だよ。せ・い・じ。』
前髪をかきあげるとポケットからチョコレートを出した。
それを見て驚く斬雪。
『手土産。故橋が持ってきたからあげるよ。あいつから貰った物なんて食べたら胃が拒否反応起こして吐く。』
ポイっと斬雪に向かって投げるチョコレート。
俺は近くにあったパイプ椅子に座ると斬雪を眺めた。
平均的に細い身体。
昨日無かった切り傷や青痣が痛々しい。
虐待?
こんな奴に?
何時から?
何のために?
誰が?
『君……名字は?』
「ん?嗚呼…確か……湧覇。湧覇 斬雪(ユウハ ザンセツ)だよ。兄さん。」
『……そのチョコ美味しい?』
「うん。久しぶりに食べた。シズ兄さんは僕と兄弟だと知ってたの?」
チョコレートを両手に首を傾げる。
俺は首を左右に振って、立ち上がり、部屋を出た。
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