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すたすたと歩く燐はあたしの腕を掴んだままで、何度も転びそうになった。
『ま…って!はやい!』
「おぉ、すまへんな」
にっかり笑って歩調を合わしてくれた。
――ガチャ
「ほら、入りぃ」
屋上へ入ると、そこには知らない人がいた。
「あ、来たー!遅いよもーっ!」
「おっせーよまじで!腹減った!」
「ほらほら、早く食お~ぜ?」
「……誰だ?」
ドアが開いた事に気がつき、一気に喋られて混乱したが一番最後の心地の良いテノールボイスだけがやけに耳に残った。
「あぁ、この子な!転校生の李由ちゃんゆーの!」
「…女…」
燐が紹介してくれたあとに、誰かが言ったが李由には聞こえなかった。
『あの、諸刃李由です…』
「か~わいいね~
俺とランチ行かない?」
色気がムンムンの人が近づいてきて、
なぜか危機感を感じ、燐の後ろに隠れた。
「おい、李由を汚すなやー」
カラカラと笑いながら燐がその人に言う。
「わるいね~、こんなんで」
「な、なんで女つれてくんだよ、燐!!」
女の子みたいに可愛い男の子が言った。
「ホントだよ
なんなんだ、この女?」
それについで、金髪の目つきが鋭い人が言い、燐はまたカラカラ笑った。
「いーやんか、華やぐで~?」
『あの、燐。あたしやっぱり教室もどるよ』
居たたまれなくて、その場を離れたかったのだが止められてしまった。
「えーよ、気にせんで
メシ食おな、ほら」
『あ、う…』
ドカリと座った燐はすでに昼食のパンに手をのばしていた。
一緒に食べたいけど、すっごい見られてるの、あたし。
燐、あたしは見られるの好きじゃないよ!
そんなあたしの願いも虚しく
ぐいっと手を引かれ座らされた。
「ほら、食おっ」
『…うん。(食べにくい…)』
でも、お腹が空いたのには逆らえなくて、お弁当を開け食べ始めた。
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