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所詮、無いものねだりの僕。自分自身にも腹が立った。
「受けても良いけど受からないで」
泣き終わると同時に、恵美は僕を睨みつけてくる。
――なんだそれ。無茶苦茶だ。
この言葉しか言えない彼女を、初めて“嫌だ”と思った。
「それは受けてみなくちゃ分からないだろ」
普通、こんな言葉思ってても口にしないだろ。
僕は本気でこの時、この瞬間から“橘恵美”という人間を嫌いになった。
彼女は僕がそんな感情を抱いているなんて事は知らない。
「とりあえず、頑張るから」
そうして、僕は受験を終え、合格発表までひたすら待った。
家にいても、恵美と会ってても全然落ち着かない。
「もうすぐ受験発表だね」
恵美のその一言に、僕はまた緊張感が高まる。
「受かってたらいいな…」
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