地球の卵

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 砂漠といっても、ここは以前、遺跡とされていた石柱が乱立していたところだ。しかし近世の人間による仕業だと判明した途端、学者たちは誰も眼を向けなくなった場所だった。  元はといえば、発見したのがこの老人だったのである。一躍スターダムにのし上がるかと思いきや、学者としての人生が一転した苦い場所でもあった。  横たわった石柱に腰を下ろして、老人は溜息をついた。 「私の考えは間違っていたのか……」  そもそも「地球の卵」がどんなものか、最初から分かっていなかったのだ。ただ、その正体を知りたかっただけなのかもしれない。  ――目の前を大きな象が横切っていく。象は振り向きざま、 「あんたも馬鹿だね……」  と、呟いていった。  不思議なもので、長年大自然の中をさまよっている内に、動物たちと会話が出来るようになっていた。動物だけではない。昆虫であれ植物であれ、「生」あるものであればいかなる相手でも会話が成立し始めたのだ。  象が去ると、今度はライオンの親子連れが近づいて来て言った。 「また来たのかい?」 「ああ、邪魔して悪いね。笑いたきゃ笑えばいい」 「笑ったりなんかしないさ。人間って馬鹿だね、と思うだけだよ」 「お前らは違うと言いたいのかね?」 「あたしらは大自然の中で生きているんだ。だからあんたが探しているものはよく知っているんだよ。人間だけじゃなく、この地球に生まれ立った生き物は、何が大事なのか見極めなきゃならないからね。人間みたいに欲ばかりかくと、大した一生は送れないものさ」  ライオンはそう言うと、子供たちを引き連れて、地平線へと消えて行った。  そんな動物たちの声は、いやというほど聞いてきた。といっても、彼らと話ができるようになったのはまだ最近である。地球上をさまよい歩き、原点であるこの地に帰って来てからのことだった。  老人はこれまで、何百、何千という生き物たちと話しをして来た。そして誰もが「地球の卵」の存在を知っているという。 「なぜだ。どうして私には見つけることができないんだ……」  
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