『宅配便』

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 カビ臭い。  引き戸を開けた瞬間、鼻先を掠めた臭気が、小波のような不快感を齎した。  爪先が埋まる程に積もった埃と塵は、扉から滑り込んできた外気と、久々の来客に歓喜し、宙を舞う。その様子が、玄関に入ろうとした俺に、二の足を踏ませた。  口元に手を宛行い、玄関先から屋内をそっと覗き込んでみると、所々床が抜けた廊下や、ボロボロと崩れかけた砂壁が見える。  視線を上へと運んでみると、天井は大きく撓んでいた。恐らく、雨漏りの所為だろう。  その天井に張った馬鹿でかい蜘蛛の巣が、こちらを睨む巨大な目玉のように思え、身震いがした。  
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