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「御免下さい、お届け物です!」
声を掛けても返事は無い。
当然だろう。扉に鍵さえ掛けられていない荒家だ。人が住んでいるとは到底思えないし、その気配もしない。
「御免下さい。どなたか、いらっしゃいませんか!」
もう一度そう声を掛けてから、軒先に目を向けてみた。
一体、どのくらい放置されているのだろうか。刈り取る者の居なくなった庭は、無軌道に伸びた雑草によって占拠され、地面さえ見えない。
その無法地帯の中央では、錆だらけの物干し竿が、朽ちかけた肢体を晒していた。
建物自体、相当に傷んでいる。
だらしなく落ちた樋。腐った縁側から外れ、歪に傾いた雨戸。奥に見えるガラス戸は、無惨に割れ、もはや戸の役割を果たしてはいなかった。
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