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「答えろ。おまえはこの王女の縁者か?」
異形の影を落とし、兵士たちの輪の中心に立っているのは、背中に瑠璃色の翼を生やした女だった。
そのたおやかな腕には、大きな水晶が抱えられている。
翼を持つ異形の女に向き合っていた者は、ドレスのスカートをつかみしめ、唇を震わせながら叫んだ。
「私はユーイ・フィスイア・ネル。いかにも、その方と同じくネルの姓を持つ者。姉上の次は、私を殺そうとでも言うのか!」
ユーイは、異形の女が抱えている大きな水晶から目が離せなかった。
それは十二歳になったばかりのユーイの身長よりも大きな水晶だった。
なぜなら、それは中に人を閉じこめていたからだ。
聖王国ルウガの第一王女、ラーイ・マルアス・ネルが、胸に短剣を生やし、水晶のなかで眠りについていたからだ。
「安心しろ。おまえを殺したりはしない。私は王女の身柄を届けに来ただけだ」
異形の女は、夜の湖水を思わせる青い瞳をユーイに向け、顎を上げた。
「……だが、そうだな。おまえは近い将来、死ぬことになりそうだな」
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