序章

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なんにもなくなった。 人件費削減で会社をクビになって半年。 彼女は俺の元を去っていくついでに、俺の貯金をネコババ。 家賃が払えず、アパートから追い出され、実家の納屋に転がり込んだが、実家の兄夫婦はいい顔をせず、肩身の狭い思いをしながらも職探しに奔走していたが、ことごとく失敗。 「ばあちゃん、リンジを楽にしてやる方法を見つけたよ」 そんな俺をあわれんで、ばあちゃんはおかしな宗教にのめりこむ。 最悪だ。 誰か助けてくれ。 楽になりたい。 楽になりたい…。 ふと、納屋の天井を見上げた俺の目に、梁から蜘蛛が垂れ下がっている光景が映った。 そうだな。 そうするか。 俺は、納屋に転がっていた衣装ケースを積み上げ、梁にネクタイを引っかけた。 サヨナラ、すべて。 ばあちゃん、こっちの方が、早く楽になれるよ。 ネクタイを首にひっかけ、勢いよく衣装ケースを蹴り飛ばす。 サヨナラ、…ごめん。 梁に、蜘蛛と俺が垂れ下がった。
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