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序章:猫屋 みずき
品川駅 改札
ジンジンとした痛みと灼熱感が疼く指先に、息を吹き掛けた。
指先が凍るほど冷たくなっている。
私のカラダが作り出した熱気の塊が、
視界を曇らせ上空へと立ち昇り
そして、消えていった。
もう、4月だというのに、
JR品川駅の東口改札口前を行きかう人々は、
厚手のコートを羽織り、吐く息も白く
冬の雑踏の中、足早に目的地へと向かって行く。
家を出る時には、もっと早く家路に辿り着くつもりだった。
夜の8時過ぎに、
品川駅にいることになるなんて、
考えてなかった。
数時間前までは、
泣き腫れた目をどうにか誤魔化そうと、
職場で四苦八苦してた私。
目の腫れは引いただろうか・・・・
なんだか気になってしまった。
目元を確認するついでに、唇に再度グロスを塗り直そうと、
改札近くの化粧室に駆け込もうとした。
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