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肌は乾燥し張りがなく、肋骨は浮き、腹だけがぽっこりと膨れている。
力の入らない両手で洗面器を持ち、湯船から汲み置きの水をすくい頭から被った。
途端、震えが止まらなくなり、生え揃わない歯が鳴る。
「水浴びは、五回。身体をちゃんと擦ること」
決められた数だけ水を被りタワシで擦ると、ぶるりと大きく身震いし、脱いだシャツで鳥肌の立った身体を拭う。
そして裸のまま、精一杯急いで男の下へ戻った。
「遅えっ! 飯が欲しくねぇのかっ?」
平手で頭を張られ、吹っ飛ぶように畳に倒れたその顔を、容赦なく男は踏み付ける。
「ご、ご飯。た、べたい……」
「だったら、それなりの態度があるだろう? ああっ?」
男の足の下で身じろぎ膝を揃えると、ざらつく視界の中で男を見上げた。
「ご、ご飯をください。おね、お願いします」
「そう、それでいい。ほら、食え」
「あ、ありがとう、ございます」
投げ寄越された一枚の食パンを拾い、がつがつと貪る。
薄いパンはぱさぱさで、上手く喉を通らなかったが、構わず口に押し込み必死に飲み下す。
いつ男の気が変わり取り上げられるか、分かったものではなかったからだ。
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