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蝋燭の灯りに照らされた赤ワインの色はどうだ?
化粧をしていない、美しい美咲の肌の色は?
「赤い色――」
美咲の行動に僕は抵抗しない。
「F熱はね、潜伏期間が1年。発症した後、自然に治癒を待つなら2年がかかるわ‥‥」
時々美咲の髪が僕の顔を覆い尽くすから、くすぐったいしうっとおしい。
「貴方の初めては?」
美咲はグラスをつまんだまま僕の上にいる。
「君じゃないか‥‥」
分かりきった事を聞かれるのは、良い気持ちでは無い。
だから僕は紗智を選んだのかもしれない。
「あ、聞こえた。貴方は私と紗智を秤にかけていたのね」
唯一の灯り。土産物の蝋燭は出鱈目だった。
早々と芯が倒れ、それが蝋の池に沈もうとしている。
(反論はしないよ。今日は本当に助けられたんだから)
「この国はボロボロになるわ。外出禁止令は少なくとも2ヶ月は続くでしょうから」
終わり間近の蝋燭の炎が、一瞬だけ大きく明るく輝いた。
「あのさぁ――」
僕は唇を美咲に塞がれたから、心を言うのを仕方なく止めた。
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