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きらびやかな金の縁取りがされた絨毯の両脇には、立派な服を着たラッパの兵隊さん。
彼らがラッパを吹き鳴らすと、世にも美しいクローニー王国のお姫様が、国民にお目通ししてくれる。
そして、今日も。
「王女様の、おな~り~!!」
けたたましくラッパが鳴り響き、絨毯を静かに踏みしめるヒール。
まだ若い姫君は、すねまでの長さの純白のドレス姿で、城内からバルコニーへと赴いた。
その表情は凛としていて美しく、所作すら輝く。
バルコニーへ出た彼女は、国民へ軽く手を振った。
「皆様、ご機嫌うるわしゅう。サイネリアでございます」
少女らしさの残る澄んだ声が、国民に染み渡る。
「本日はとても気持ちのいい日ですわね。皆様、お仕事に精を出されていますが、どうかお体には十分にお気を付け下さいませ」
にこやかに、とりとめもない演説を進めていく。
「最近、森でモンスターを見かけたという話を、兵士から聞いております。どうか森には近寄らないように、お願い致します」
やんわりと危険を知らせて、仕事はおしまい。
王女は速やかに自室へ戻る。
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