見えない気持ち~side A

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          「んしょ…」 体を起こして胡座をかく サイドテーブルの煙草に火をつけ、すぅっと深く吸い込み、煙で肺が満たされる感覚を楽しんだ そして思う あいつだって俺と同じはずだ なのに、それをおくびにも出さず気丈に振る舞っている でも時折、自分の中に溜め込んだ澱を吐き出すように俺を誘った それは自分も一緒だから、お互い様ってやつだろうか… そうすることによって、自分たちの傷を舐めあっているんだという自覚はあるんだけど… 無条件に信じ、頼ってきた相手が… 当たり前のように、一生を共に過ごしていくんだと思ってた相手が… 目の前から忽然と消えてしまうという現実は俺たちの上に重くのしかかって、1人では立ち直る事は困難だった 自分に至っては、まだやるか決めてはいないけれど、最近見つけたいかがわしいバイトにまで興味を持ち始めていて… ――出張ホスト… ひょんな事から知ったその存在が、何となく頭から離れなかった 金に困っている訳じゃない ただ…… ぼんやりとそんな事を考えているうちに、シャワーを終えたらしい 腰にタオル一枚を巻きつけて部屋へ戻ってきた いつの間にかフィルターの元まできている火種に慌てて、手元の灰皿にそれを押しつける  
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