トハラ ミチル

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「…やっぱり、上手いなー。」 白い壁 白い床 小さな四角い窓 何の変てつもないただそれだけの狭い部屋 だけど、その空間は、沢山の絵で溢れてた。 壁や床に染み込んだアクリル絵の具の匂いは、慣れれば平気。 「…ねぇ、みち。何で人間の絵しか描かないの?」 みちは、絵が上手くて、自分の個展も開けるんじゃないかな、って思う位の腕前だった。 確かに上手い。 だけど、いつも描く絵は、決まって人々の表情や仕草ばっかり… 「…いやー、写真みたいにリアルだし…すっごい上手な絵なんだけどさ……。…ほら!このアトリエ、せっかく綺麗な景色がいっぱい見えるんだし…」 狭い空間の小さな窓は、それなりにちっぽけだ。 …だけど、 綺麗な空 エメラルドグリーンの海 白い砂浜 この空間の外は、とても広々で美しいものに溢れてた。 まるで、自分が絵に入った様に感じる事が出来る…溶け込むような空間。
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