アリス

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「ねえ、君も僕を殺そうとする?それとも逃げ るかい?」 そう言った男の手を、アリスは握った。とて も冷たくて驚いた。 「いいえ。あたし、あなたのこと怖くないも の。可哀想な人。ずっと一人だったのね。 ねぇ、あたしと一緒にあたしの世界に行きま しょう?きっと、あなたを救えるわ」 男はとっさに逃げようとした。それでもアリ スは手を離さないから、男はうつむいた。 「ね、一緒に行きましょ?名前はなんていう の?」 「名前なんてないよ。みんな僕をmad hatterって呼ぶけど。…帽子屋さ」 「…そう。マッドハッター?大丈夫。狂っていて も人を愛せるなら、あなたは人間よ。人を愛し たこと、ある?」 帽子屋は何も言えなかった。 僕はみんなを愛しているよ。みんなは僕を愛 してくれないけど。僕が、狂ってるからか なぁ? 「たぶんあなたは愛してもらったことがないか ら、愛しかたがわからないのよ。大丈夫。あた しが教えてあげるわ。だってあたし、もうあな たのこと愛しく思ってる!」 帽子屋が驚いて見ると、アリスはにっこり微 笑んだ。帽子屋は何も考えずに、目の前の少女 を抱き締めた。感謝の言葉も言えないから、た だ抱き締めた。そんな彼を、アリスは本当に愛 しく思った。
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