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「その好きな人っていうのが…、目の前にいるって言ったら…。どうしますか…?」
面食らった。
有りがちな台詞だが、まさか、そんな目で彼女が僕を見ているとは。
「ミヤ、飲みすぎだよ。何を突然言い出すんだよ」
蒸気した頬と潤んだ瞳は、部下の昼の顔とは明らかに違うものの、
まだあどけなさの残る唇で告白する彼女の横顔は、
魅力的というよりも可愛らしいというのが精一杯だった。
行きつけのバーのカウンターで、
僕は、次の言葉が浮かばず、ウイスキーを一口飲んだ。
熱い液体がゆっくりと喉を下っていく。
「…迷惑ですよね」
「あぁ…、いや。ちょっと突然で驚いてる」
「…タツさんは自分のこととなると鈍感だから」
俯き気味に雅が笑った。カクテルグラスの縁をなぞる指先は、次の僕の言葉を待つようにクルクルと回る。
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