全ての始まり

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「酷いですよね。嫁入り前の身なのに。  でも責任取って結婚するなんて言われても、絶対にお断りですけどね」 「アイツが…。女の子に暴力を振るうなんて…」 「外面いいですもんね、タクは。タツさんの大学時代の後輩だったですよね?」 その通りだった。 高山拓海とは、大学のテニスサークルの二歳年下の後輩で、もう10年来の付き合いになる。 「タツさん、タツさん」と、何かあれば相談してきて、僕は弟のように接してきた。 拓海は真面目で、誰にでも優しくて、争い事の嫌いな、優等生タイプの男だ。 3年ほど前に、過酷な集合住宅販売の仕事に参ってしまい、 精神を病む寸前で、見かねた僕が今の同じ職場に引っ張った。 生来の生真面目さと、爽やかな立ち振舞いで、入社半月で契約を取って、表彰されたこともある。 弟分が、新しい職場で成果を上げ、どん底から立ち上がったことに、僕は心から喜んだ。 拓海も、表彰された日の夜は、このバーで泣きながら感謝をされた。 …そんな拓海が、暴力? にわかには信じがたい話だ。
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