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4月7日、今日は椎名瑞季(しいなみずき)の高校生としての初めての学校。
新しい制服に肩を少し過ぎるぐらいのパーマの掛かった髪。
そしてくっきりとした目。
美少女とまではいかないけど可愛いとは自分でも思う。
その証拠に校門を過ぎて昇降口に到着するまでに二人の先輩にナンパされた。
「結城先輩はナンパしてくれないのかな」
自分の呟きにしばしの間、顔を赤く染める。
何考えているんだろう私。
結城先輩はナンパなんてしないのに。
「おっ、妹ちゃん!」
「ゆっ、結城先輩っ!」
そこにはスクールカバンを肩に掛けた愛しの結城先輩が上履きに履き替えている。
制服を少し着崩した結城海人先輩はいつもより輝いていた気がした。
私、絶対顔赤くなっているよね。
私が顔を俯いていると結城先輩はー
「あれ?・・・修哉と一緒じゃないの?」
「お兄ちゃんは寝ていたので置いてきました」
私の口から残酷な宣言をすると先輩は笑っていた。
ヤバい!
この笑顔を直視していたら気絶しちゃう。
「修哉、また遅刻しなければ良いけど」
結城先輩は苦笑いで答えた。
「あっ、妹ちゃん。入学おめでとう!」
「結城先輩、『これからも』よろしくお願いします!」
『これからも』ところを強く言ったのは軽く誤魔化す。
「そういえば、妹ちゃんはバスケ部に復帰するの?」
「えっと・・・」
結城先輩の目には色々な感情が宿っていた気がする。
私はもう...
「もうバスケなんてやりません。今の私は無力ですから」
涙が溢れそうになるのを堪えて笑顔で結城先輩を見据える。
「せっかく足が治ったのにバスケを捨てることが出来るの?」
結城先輩の強い眼差しが私を見つめる。
「・・・私には無理なんです。昔の私は出来すぎていたんです」
「・・・」
昇降口で結城先輩と見つめ合う。
いつもはドキドキするのに今は結城先輩の目が怖かった。
その目は怒っているように見えた。
「確かに最初から諦めている奴には絶対に無理だね」
「えっ?」
結城先輩は笑っていたけど目は笑っていなかった。
「ううん。そろそろ教室に行くね」
いつもの笑顔で見つめられて顔が真っ赤になるのが分かる。
やっぱりカッコ良い。
「はい、結城先輩」
それから私は自分のクラスの一年四組に行く。
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