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「ピアス」
ガシャン
死にたがりの女の部屋で気持ちの良い音が鳴り響いた
女は手慣れた仕草でピアッサーをごみ箱に捨てる
そして女は鏡に映る5個目のピアスを眺めて覇気の無い顔で微笑んでは目の前にあるナイフと睨めっこ
そう、この痛みはいつか死ぬ時までの練習
本当に死ぬ気があるのならどんな痛みでも耐えられるはず、と一気に開けた5個のピアス
別に何があった訳でもない、ただ何も無い、何も感じられない自分が気に入らないんだ
耳がまるで鼓動を打つ様にじんじんと痛む
うっすらと涙が滲んだ
ガシャン
次の日も死にたがりの女の部屋に気持ちの良い音が鳴り響いた
そして鏡に映る15個目のピアスを見て覇気の無い顔で引きつり笑いをしてはあまりの痛さに、今なら死ねると側にあったナイフで首を切った
白い肌から真っ赤な血が流れ落ちる
生死をさ迷いながら女の中に生まれる矛盾
そしてその答は震えた手で必死に掴んだ携帯電話にあった
女は一命を取り留めた
ガシャン
気持ちの良い音が女の部屋で鳴り響いた
女は手慣れた仕草でピアッサーをごみ箱に捨てる
そして鏡に映る16個目のピアスを眺めて、今度ははっきりと意思を持った目で見つめた
何の迷いも無い強い目
そう、この痛みは私の生きてる証
だから一つずつ刻んでいこう、その証を
別に何も無くたって何も感じられなくたって構わない、今はこの痛みさえ感じられればそれでいい
例え何でそんな生き方しか出来ないの?と嘲笑われてもこれが精一杯の私だから
そして不器用ながらも、今日も私は生きていく
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