第一章 始まりの鐘

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表向きは不義の子として扱われているが、実際のところ、王と自分の血は一滴足りとも繋がっていない。 話によれば、母は旧伯爵家の令嬢だったらしい。 父親も母よりは身分は低いながらも、堅実な人だったと聞いている。 母は父と出会い恋に落ち、わたしを身籠り出産した。 だが何故か、その数日後のこと。 母と父は突然別れた。 何が原因だったのかは、産まれたばかりのわたしには知るよしもなかったし、大きくなってからも、母が教えてくれることはなかった。 ただ、母は王に美しさを見初められ王妃になったと言う。 結局のところ、一般に言う連れ子だが、王の血を継がぬ者が王族だと言うのは、体裁も悪いのだろう。 このことは王族に関わりのある者しか知らないことだ。 だからこそではあるが、母が病で死んでから、父が自分の面倒をみる必要は、必ずしもあるとは言えなかった。 けれど、国王は律儀にわたしを引き取り、育て続けた。
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