第一章 始まりの鐘

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結婚の話を聞いたのは、昼すぎだった。 もっとも、幽閉されているため昼の感覚は殆んどといって感じられないので、おおよその時間だ。 いきなりの話とは言え、驚きは感じなかった。 もとより、幽閉された身だ。 今さら、幸せに暮らせるとも思ってはいなかったし、あの父のことだ。 役立たずの娘ならば、いずれ何らかの処置を取るとふんでいた。 ただ、思ったより早かっただけ。 それだけだ。 目の前で女は悔しそうに涙を流している。 滑らかな肌を涙がゆっくりと這いながらおりてゆくのを見ながらバカな人だ。と思った。
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