第一章 始まりの鐘

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他人のために涙を流すだなんてどうかしている。 ましては、この国に不要な自分のために泣くだなんて。 けれど、その涙が彼女の持つ優しさであることも知っていた。 呆れるくらいお人好しで優しい人。 彼女とは、八年以上の付き合いになる。 「顔をあげて。ミシェル。わたしは平気だから」 「いいえ!こんなの酷すぎます。陛下は勝手です!」 「そうね。でも、王の命令は絶対だわ。それに逆らうことは、許されない。わたしはまがい物なれど、この国の娘なのだから」 そう。 自分はまがい物なのだ。
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