私にとっての鍵なのです

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彼の弟を隣に座らせ、冷蔵庫から冷たい麦茶を出しコップに注いだ 「疲れたでしょ?」 コップを差し出しながら訊ねると「中々着かなくてびっくりしました」と応え、ありがとうございます頂きますと言った 余程喉が渇いていたのだろう 中身が直ぐになくなってしまった おかわりを聞くと大丈夫ですと言われた やりとりが終わるとお互い黙りこんでしまった 赤い夕暮れを眺め、あの日を思い出す あの日のあの時もこんな空だった 都会と田舎じゃ少し違うが空を見るとあの頃に戻るような感覚がやまないのだ 彼が彼方〈アチラ〉から呼んでいるのか、それとも私があの日あの頃を恋しんでいるのか 自分でもはっきりしない 戻れるものなら戻りたい 過去へ そして取り戻したい 未来を
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