31人が本棚に入れています
本棚に追加
取り出したのは一枚の用紙。恐らく退学手続きを行う目的の正式な用紙だろう。
わかっていた──いや、望んでいたことだ。何も驚くことはない。
約2秒、担任が紙を見つめたまま静止する。それからの動きは早かった。
慣れた手つきで胸ポケットに刺さっているボールペンを引き抜き用紙に乗せる。
「ここにサインと印だ」
やっぱり。印鑑は自宅にあるため一度戻る必要がある。もっとも、もうこの場に来ることはないと思うが。
この時、俺の考えは当たっていた。実際にもうこの場所に立つことは二度となかったのだ。
ただ、当たっていたのはそこまでだ。
「お前には、転校をしてもらう。──×校に」
最初のコメントを投稿しよう!