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バイト帰りで疲れている俺は、ぼーっとしながら夜道を歩く。
「………誰かにつけられてんなぁ…」
中学時代から伊達に狙われて続けている訳じゃない。俺は、そのうちに夜目が効くようになったし、気配もある程度は読めるようになった。
「めんどくせぇな………」
気配が段々近づいてきたので、振り向いて迎撃を試みる事に。殺られる前に殺れ、だ。
「……………。」
「真っ黒とか……車に轢かれるぞ?」
小さな街灯が照らす道で、キャップから靴に至るまで真っ黒な奴が俺に殴られていた。
「はぁ………何の用かは知らないけど、俺は早く家に帰って寝たいんだよ。用件なら早く済ませてくれ。」
ため息をつきながら言うと、真っ黒な奴は俺にものすごい勢いで近づいてくる。…人間じゃあり得ない速さだった。
「…………っ!?」
口元に布を当てられた。叫ぼうとして息を吸ったら、ものすごく甘い匂いがした。果物の匂いとも、甘い菓子の匂いとも違う、どこか不安を掻き立てるような匂い。
「な、ん…………」
辺りは夜中だから暗いはずなのに、目の前が真っ白に染まる。
「う…………」
体のバランスが崩れ地面に倒れたのがわかったが、体は動かず、そのまま意識が遠くなっていった。
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