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「はぇ!? あ、ユキトさん! これはですね、決して買ってもらったチキンの数が合わないと言い訳をして、もう一つ不正に貰おうという魂胆でしている行為ではないのですよ! これはそこに落ちていた紙屑を捨てようという善意から……」
俺の視線にようやく気付いたのか、慌てて紙屑をレジの下にあるゴミ箱へと放り込んだニコル。
今さら言い訳をしても遅い。
俺はたった今現場を目の当たりにし、尚且つお前からの証言も頂いたからな。
「今お前食ったって言」
「そんなことはどうでもいいのです!」
俺が言い切るよりも前に、そう切り出した美少女ニコル。
この期に及んでまだシラを切るのかお前は。
「それでもあそこがファミチキ界の入り口であることに間違いはないんです! 早く行ってご両親を助けに行かないと、あなたのご両親が本当に店頭に並べられることになってしまいますよ!」
そして、ニコルは満面の笑みで俺の手を取った。
「ちょ、ちょっと待て!」
前言撤回。
こいつを力ずくで家に連れ帰ることは俺には到底無理そうだ。
それくらい強い力で、まるで正月の凧のように俺を引くニコルは、さっき落としたファミチキを勢い良く踏みつけながら一直線に『自称・ファミチキ界の入り口』へと向かって行くのだった。
「このニコル = アナスタシアと! いざ、ファミチキの世界へ!」
そうして俺は何が面白くてそんなことをする羽目になったのか、二人で洋式トイレに駆け込むこととなったのだ。
ああ、本当に良かったよ。さっきの会話の最中で店員さんが控え室に消えてくれてさ。この場面を見られてたらきっと三回くらいは切腹してたよ俺。
そう思った直後、鍵が閉まる音と共に俺は目映い光に包まれたのだった。
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