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「いいですか、ユキトさん! ファミチキ界とはこの世界とは別の次元に存在する世界の事で、相当な実力者でなければ危険すぎて帰ってこれないとも、一回入ったらボスを倒さないと出て来れないとも言われている世界のことなんです! そんな世にも恐ろしい世界にですよ、スタ○ドも無しに足を踏み入れるのは死にに行くのも同然のことなのです! なのにあなたのご両親と言ったら……」
新たな年に向けて俺は今、目下部屋の大掃除をしている途中。
そんな俺のすぐ隣で、先程から意味の分からないことを連呼しているこの女。一応こいつについて話す前に、まずは俺の両親について話をしておこうと思う。
俺の両親は、俺が中が……
「何が『七つのボーロを探しに行く』ですか! そんなものコンビニに行けば売ってるじゃないですか! いえ、確かにコンビニに行ってしまったからこのような結果になったわけですけれども、それにしてもどうして……」
………………。
あれは俺が中学二年の頃の話。俺の両親は「ファミチキ買いに行ってくるね」と言い残……
「あぁもう! 聞いてるんですかユキトさん! あなたのご両親のことですよ! あなたのご両親はファミチキ界に行ってしまったのですよ! どうしてそれを理解」
「うるせぇよ!」
「はうぅ!」
ビクンと、俺の目の前で小さく肩を震わせたバカ女。
「掴みかかってくんな! 掃除の邪魔だ! 何がスタ○ドだよ! お前はあれか? 左肩に星のアザでも持ってるとでもいうのか? ちなみに言っておくが、俺の親はお前の言う訳の分からない世界に行ったんじゃなくて、俺を捨てて逃げただけなんだよ!」
そう。俺はあの日両親に見捨てられた。
二年前のクリスマスの日、あの一言を最後に両親は俺の前から蒸発した。
「で、ですから、あなたのご両親は」
「ファミチキ言うのは禁止な」
「ファミ────」
「ファミ?」
「ファミ……」
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