チキン1つ! アナスタシアと名乗る少女

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 よし、黙った。  涙目でこちらを見られると少し罪悪感を感じるのだが、まあ仕方ない。  それではこいつが黙ったところで、俺の両親について話をすることにしよう。  ………………  ……。 「ファミチキ買いに行ってくるね」  二年前のクリスマス、俺の両親はそう言って俺を残したまま家を出ていった。  最初は俺の大好きなファミチキを買って来てくれるものだと、そう信じていた。  でも、その日は何かがおかしかった。  五時間待っても帰ってくる気配がなかった。  俺は次第に焦りが募り、そしていつの間にか電話を片手に呆然と立ち尽くしていた。 『お客様のお掛けになった電話番号は現在使われておりません』  当時、まだ子供だった俺はその事実を間に受けることもできず、状況を理解できずにただひたすら両親の帰りを待ち続けた。  ただ、親のいない日が三日と続き、流石におかしいと感じた俺は、そして警察へと連絡を入れたんだ。  その後行われた調査の結果を聞いた限りでは、両親は近場のファミマに入店した後消息を絶ってしまったらしい。  訳がわからないと否定する思いと、失踪した事実を認めざるを得ない現実で、俺の頭はいっぱいになっていた。  そう言った経緯もあって、新年早々俺は親戚の叔母さんに引き取られることになった。  最初は本当に心苦しかったよ。  だってそうだろ。言ってしまえば部外者であるはずの俺が、同じ屋根の下で同じ家族として生活するんだから、それほど肩身の狭いことはない。  だから俺は、叔母さん達に義務教育期間である中学三年の残り一年間だけお世話になり、高校に上がると共に上京して下宿を始めた。  そうそう、ファミーマートでコンビニのバイトを始めたのも確かその頃からだ。
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