チキン1つ! アナスタシアと名乗る少女

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 とにかく孤児と言うことさえ除いてしまえば、周りからすればごく当たり前の男子高校生として見られる俺は、入学した高校も一人暮らし先も、特にこれといった不自由もなく普通の一高校生として生活してきた。  そして、親が蒸発してから早くも二度目のクリスマスが訪れようとした前夜、俺には何とも言いがたいほどに素晴らしい……訂正、迷惑この上ないクリスマスプレゼントが届いたのだ。  それがこいつ。今俺の目の前でタダ飯を三日間くらい続けている「食う、寝る、遊ぶ」がモットーの超絶が付く迷惑美少女、ニコル = アナスタシア。  俺も当初はそのあまりの美貌に言葉も出ないほどに見とれていたが、今となってはいくら彼女が色仕掛けをしてこようが上目使いをしてこようが、全くの無視。それほどこいつはウザかった。  何せ一度話し始めたら自分の好きなテレビ番組が始まるまで話をやめないからね。しかもこいつの好きなテレビ番組、狙っているのかと言いたいほどに、なんと俺の見たい番組と毎回被ってるんだ。 「はぁ……」  どうしてこうなったんだか……。  思い返せば三日前、彼女が全身ずぶ濡れで「今日だけでいいので泊めてくれませんか」と、決死の形相で俺の家に飛び込んできたのが切っ掛けだ。  自分一人の生活も手一杯な俺だけど、衰弱しきった女の子を前に断る言葉が思い浮かばなかったんだ。  だから一日だけと言う約束で、俺は彼女を家に泊めてやることにした。  そう、それが俺の不幸の始まりだよ。 「え、えっと……」  彼女の蒼い瞳が、今にも泣き出しそうなほどにゆらゆらと揺れる。 「なに。まだ何か話すつもり?」  もちろん俺は容赦しない。  だってそろそろ出ていって欲しいからね。俺の部屋から。 「いえ……で、ですから、あなたのご両親はファミ……ファミ……」  お、さっきの禁句がまだ効いて…… 「そう、チキンの世界に旅立たれてしまったのです!」  …………うぜぇ。  
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